『フタリソウサ』 シナリオ「猫が導く殺人事件」 はじめに  このシナリオは、「猫探し」を依頼された探偵たちが、その真意を探り、殺人事件に隠された真実を暴くシナリオです。 『バディサスペンスTRPG フタリソウサ』のリプレイでも使用したシナリオを遊びやすいようにアレンジしたものになります。  もし、『バディサスペンスTRPG フタリソウサ』を持っているのなら、リプレイを演出やロールプレイの参考にしても構いません。  また、本文中のキーワードに使用している数字は本来丸付き数字によって表記されるものですが、機種依存文字であるため、「1」のように半角数字で表現しています。ご了承ください。 シチュエーション  PCたちは、片倉美奈子という人物から「ミャーコ」という名の猫を探すよう依頼をされます。  「ミャーコ」は、知り合いの白石琴音から引き取る予定だったとのこと。  その猫探しですが、どうやら「裏」があるようです。  ただの猫探しでは終わりそうもありません。 ●登場人物 ・片倉美奈子(かたくら・みなこ) 31歳女性  白石琴音のペットである「ミャーコ」を探していた人物です。  見栄を張る人物であり、日常生活の中で、細かく嘘をついてしまう人物です。 ・白石琴音(しらいし・ことね) 25歳女性  ミャーコの飼い主です。  事件発生フェイズの時点で死亡しており、そのことはニュースにもなっていました。  派手な金遣いをしていたようです。 ・満永定男(みちなが・さだお) 38歳男性  白石琴音と付き合っていた男性の一人です。  城蔵金庫(じょうぞうきんこ)という金庫業を営む大手企業に勤めていました。  城蔵金庫は大手企業であり、「預けた情報や貴金属は必ず守る」と評判でしたが、経営難に陥り、大規模なリストラを行いました。  満永定男は、大規模なリストラの対象です。そのため、真面目に働いて白石琴音に貢ぐことがバカバカしくなり、「情報を抜く」という犯行を行いました。  その犯行が、すべての始まりです。  もともとは真面目な人物だったそうですが、リストラの対象になってからは粗暴で乱暴な口調になりました。 ・田中道雪(たなか・どうせつ) 54歳男性  城蔵金庫に勤務する、満永定男の上司です。  大規模なリストラを行った人物です。  真面目そうな人物ですが、常に「何かにおびえ」ていて、周囲を警戒しています。 ・ミャーコ  白石琴音が飼っているという「猫」です。  実のところ、この猫は実在していません。  バーチャルペットであり、「言葉を入力するとイラストの猫が返事をする」アプリケーションでした。  「毒舌がウリ」であるため、刺のある言葉を使います。 ●真相  白石琴音の死の真相は、以下の通りです。  満永定男は、白石琴音に貢いでいました。しかし、貢ぎ続けた満永定男は、当然財産を失います。  そこで、満永定男は自分の勤めていた城蔵金庫に目を付けます。  金庫に保管されていた情報を売り、金に換えたのです。  城蔵金庫の田中道雪はそのことに気付き、満永定男に自首するよう説得しようとしました。しかし、この説得は失敗してしまいます。  なので、田中道雪は白石琴音のもとに行き、事情を説明して説得に加わるよう言いました。  これによって、自分に貢がれた金の正体を知った白石琴音は、良心の呵責に耐え切れず、可愛がっていたミャーコに打ち明けます。  すると、ミャーコは定型文である「そんな最低の奴死んだほうがいい」を表示させました。  この言葉がきっかけとなり、良心を痛めた白石琴音は自ら命を絶ちます。 ●犯人  このシナリオの犯人は、「白石琴音を殺した人物」を問われます。  白石琴音は自ら命を絶ったため、「白石琴音」が犯人となります。  そのきっかけとなった「ミャーコ」でも犯人を指定したことになります。 事件発生フェイズ  探偵たちのもとに、片倉美奈子が訪ねてきます。探偵たちが探偵業を営んでいる場合は、看板や広告を見てやってきます。そうでない場合は、「様々な事件を解決」している人物と聞いてやってきます。  いずれの場合も、片倉美奈子は「ミャーコ」という猫を探してほしいと探偵に依頼をします。このとき、「表向きの探偵」がどちらか確認をして、表向きの探偵相手に依頼をしましょう。  片倉美奈子は以下のことを伝えます。この文章をプレイヤーに伝えるだけでもよいですし、ロールプレイをしながら伝えても構いません。 ・ミャーコは知り合いである白石琴音から譲り受ける予定だった。 ・譲り受ける前にミャーコはどこかに行ってしまった。 ・白石琴音から、「代わりに探してきてほしい」と言われた。 ・白石琴音から「白い猫で、赤い首輪を付けている。そこに名前が刻印されている」「ちょっとマイペースな性格」「疲れたときに話しかけるといやされる」という特徴を聞いている。  依頼の報酬も提示します。その金額は妥当なものであり、探偵業として動く分には問題ないでしょう。  このタイミングで、知ってたカード1を渡します。  探偵がなぜこのタイミングで知ってたカード1の内容がわかったのかを質問した場合、以下のことを答えましょう。 ・白石琴音の死亡は、1日前に死亡しており、すでにニュースになっている。白石琴音はそのことを知らなかったようだ。  知ってたカードの内容から片倉美奈子に質問することはできます。譲り受ける予定については、「確かに聞いた」と念を押されます。嘘をついていることを指摘しても、「何の根拠があって」「私がそうする理由はないでしょう」とはぐらかされます。白石琴音の死は、単に知らなかったようです。  質問が終わると、片倉美奈子は去っていきます。  猫探しの依頼を受ける、受けないはPCたちの自由です。依頼を受けなかった場合でも、知ってたカードの情報を探りに行くことになります(その理由はプレイヤーが決めましょう。特に思いつかない場合は、探偵の好奇心としてください)。  初動捜査を行います。初動捜査の最中に、「白石琴音は死体で発見された」、「部屋には複数の人間の痕跡があり、計画的な殺人とみて警察が捜査をしている」という情報を伝えてください(馴染みの警官NPCやラジオやTVの情報などを使って表現するとよいでしょう)。  初動捜査によって獲得できるキーワードは「1」です。  初動捜査後、「調査の障害」を設定します。【捜査困難レベル】は「1」です。  このシナリオの「犯人」は、「白石琴音を殺した人物」となります。 捜査フェイズ  捜査フェイズでは、ミャーコ探しと、それに関連する白石琴音の死について調べていきます。 ●フタリソウサシーン キーワード6を調査した場合  PCたちは、再び片倉美奈子と対峙します。  彼女をたまり場に呼び出す、あるいは報告のタイミングで話を聞くことになります。  ここまでの調査で、「ミャーコという猫は、バーチャルペットであった」ことがわかっています。  それすら知らない片倉美奈子が猫探しを頼んだのは、なんらかの意図があっての行動でしょう。  探偵は、その意図について心当たりがあります(探偵の直感や、助手の捜査によるものです)。城蔵金庫のパスワードが関係しているでしょう。  そのことを片倉美奈子に問いかければ、彼女はひどく動揺します。  それ以上問い詰めると、片倉美奈子は「な、なによ。私を疑っているの?」と動揺しながら誤魔化そうとします。  しかし、探偵たちの追及に折れて、「白石琴音に自慢されて自分がいかにみじめだったか」を語ります。  片倉美奈子は「だからと言って殺したりはしない」と言い、狙っていたのは財産だけだと告白します。  そのために必要なのが、ミャーコという猫だったそうです。  キーワード6「ミャーコという猫」を獲得します  それを聞いた片倉美奈子は、彼女の財産を手に入れるために、ミャーコを探していたようです。  探偵にすべてを暴かれた片倉美奈子は、罪を認めながら探偵にミャーコ探しの報酬金を払います。  猫探しは終わりますが、白石琴音の死についてはまだ真相がわかっていません。探偵たちの捜査は続きます。  ちなみに、バーチャルペットであるミャーコは特定の言葉を覚えさせることができます。この機能を使って、白石琴音は金庫のパスワードを覚えさせたのでしょう。 ●フタリソウサシーン キーワード「8」を調査した場合  PCたちは、事件に関わっているかもしれない城蔵金庫が慌ただしいことに気付き、調査を始めます。  すると、城蔵金庫は「金庫の鍵が盗られ、預かっている情報が漏洩していた」ことがわかります。もちろんこの情報は社外秘であり、世間には発表されていません。ですが、探偵や助手は調査と推理によって見抜きます。  この過程を詳しく描写したい場合、リストラされた元社員(満永定男とはまた別の人物です)に話を聞く場面などを作ってください。  大規模なリストラで人員が減った結果、セキュリティが甘くなっており、内部的な犯行を疑われているようです。  キーワード8「預かった情報が抜き取られる事件」を獲得します。  城蔵金庫内では、誰が抜き取ったのかを調査していますが、会社に恨みを持つ者かつ内部情報を持つ人物が多すぎる(大規模なリストラが原因のため)のもあって、誰がやったのかわかっていないようです。 ●フタリソウサシーン キーワード「11」を調査した場合  このフタリソウサシーンは、キーワード「8」「9」「10」を獲得している場合のみ発生します(そうでない場合は【フタリソウサ】の使用を取り下げてください)。  PCたちは、田中道雪から話を聞いています。  白石琴音は、満永定男が「預かった情報が抜き取られる事件」を起こしていたと知ってショックを受けていました。  「説得に協力したい」と白石琴音は言っていたようです。  キーワード11「ひどくショックを受けた」を獲得します。 ●フタリソウサシーン キーワード「12」を調査した場合  このフタリソウサシーンは、キーワード1を獲得している場合のみ発生します(そうでない場合は【フタリソウサ】の使用を取り下げてください)。  探偵と助手は白石琴音について改めて調査をします。すると、田中道雪と会った日から、白石琴音はどこか「思いつめた」ような表情をしており、身近な人間に「何かを伝えようとしていた」ことがわかります。  しかし、身近な人間たちも、「何かを聞こうとはしたが、結局聞き出せなかった」と証言します。  探偵は、「白石琴音は身近な誰かに対して罪の告白を行いたかった」と推測します。  そこで、PCたちは、白石琴音にとって身近な存在であるミャーコに、白石琴音が行ったであろう「罪の告白」をします。  具体的には、ミャーコとの会話機能を立ち上げ、ここまで手に入れた情報を入力し、「そんな自分をどう思うか」聞きました。  すると、ミャーコは「そんな最低のやつ死んだほうがいい」と返しました。おそらく、ミャーコに設定された定型文の1つでしょう。  白石琴音もミャーコのこの言葉を聞いたはずです。  キーワード12「そんな最低のやつ死んだほうがいい」を獲得します。 真相フェイズ  PCたちは、事件関係者を集めて、「事件の振り返り」と「犯人はお前だ」を行います。  どうやって事件関係者を集めたのかを描写したい場合は、「白石琴音の死の真相を明かす」という情報を流して、関係者を集めたとしてください。片倉美奈子はPCたちが呼べば来ます。  「犯人」を指定できた場合、「真相」が明かされます。どのように真相を明かすか迷った場合、探偵の推測という形でプレイヤーに伝えてください。  真相を聞き、白石琴音を愛していた満永定男はショックで崩れ落ち、田中道雪はうろたえます。片倉美奈子は納得した様子でした。 終了フェイズ  迷宮入りした場合、満永定男は姿を消します。警察は白石琴音死亡事件の重要参考人として、彼を追っているようです。  ミャーコ(の入ったPC)は、警察によって「重要な証拠物」として押収されます。  事件を解決した場合、白石琴音の死は自殺という形で処理されます。  城蔵金庫の事件を起こした満永定男は逮捕され、白石琴音の財産を奪おうとした片倉美奈子もなんらかの沙汰が下されることでしょう。  田中道雪は、報道され始めた事件の後処理に忙しいようです。  ミャーコについては、誰かが引き取らない限り、データは消されるでしょう。  いずれの場合でも、片倉美奈子の依頼も完遂した(つまり、収入が入った)PCたちのその後を描いてください。  PCたちのその後を描いた後、このシナリオを終了します。お疲れ様でした。 ●キーワード 「1」実在していない 「2」猫のバーチャルペット 「3」貢ぐ男がいる 「4」満永定男 「5」大規模なリストラ 「6」ミャーコという猫 「7」田中道雪 「8」預かった情報が抜き取られる事件 「9」田中道雪 「10」自首 「11」ひどくショックを受けた 「12」そんな最低のやつ死んだほうがいい -知ってたカードのテキスト ●知ってたカード1  依頼の目的は、白石琴音の飼っている「猫」を見つけることだ。  その白石琴音はすでに死亡している。  猫は、「1」。「2」だ。  白石琴音は最近羽振りがよく、「3」と言っていたらしい。  そして、これは勘だが。依頼人、片倉美奈子は嘘をついている。 ●知ってたカード2  白石琴音の財源は、「4」という人物だ。  「4」は城蔵金庫という会社に勤めていたが、「5」の対象だった。  城蔵金庫といえば、最近「5」を発表し有名になった貸金庫の大企業である。  白石琴音は、自分の財産を城蔵金庫に預けていたようだ。  そのために必要なパスワードを『6』が持っている。  また、数日前に城前金庫の「7」が白石琴音を訪ねていたという。 ●知ってたカード3  城蔵金庫について調べてみると、『8』が起こっているとがわかった。  『8』は、まだ表に出ておらず、報道されていない。  『8』の犯人に心当たりがある「9」は、満永定男と会い、「10」するよう勧めていた。  しかし、満永定男は止まらなかった。  なので、「9」は白石琴音を訪ねて、「10」に協力するよう頼んだ。  白石琴音は、『11』ようだ。  ここからは推測だが。『11』の後、白石琴音は身近な存在に罪の告白を行った。  その結果、帰ってきた言葉は『12』。