試写会が当たって、一足お先に「キューティーハニー」を見てきました。
会場は、比較的小規模なシネコンの、その中でもかなり小さなシアター4。
上演時間は、夜もふける20時40分からの1回のみ……と、もともとはアニメの「キューティハニー」なのに、良い子は寝る時間からと大胆なセッティング。おまけに招待券もペアチケットではなく、1当選につきお一人様ご招待という形式だったりして
「子どもをなるべく排除する」という映画館側の方針なのかな、と思ったのですが、
実際には、映画館側の意図どおり事は進まなかったようで全席指定のシアターには、見渡したところ数名の子どもが座っています。
席に着いてみると、わたしのお隣も、小学校3〜4年生くらいの女の子でした。
白いフリルのついたブラウスと紺色のジャンパースカートをまとい、真ん中で分けた前髪を両側でリボン留めした、上品な雰囲気の少女です。映画が始まるまで、一緒に来たお父さんと仲良くジュースを飲んだり他愛もないおしゃべりをして時間を過ごした上に、その様子を横目で見ていたわたしに微笑んだりしてくれた「躾の行き届いた」女の子である彼女はこちらが心配してしまうほど、今宵の演目には似つかわしくないように思えました。
そして、わたしの心配はそのまま、ずばり的中してしまいました。
「キューティーハニー」の初出は、資料によりますと、1973年。監督である庵野秀明氏は、1973年当時のレトロ感を作品の随所にたっぷり含ませることにこだわりをお持ちだったようで、OLさんの制服も、登場人物のギャグセンスも、全てがレトロでいい感じです。
……と、1970年代生まれのわたしは思った次第なのですが、どう見積もっても1990年代生まれの彼女には、全てがさっぱりワケワカラン世界のようでして。。。
「ねーねーおとうさーん。意味わかんないよー。何が面白いのー?」
「ねーねーおとうさーん。あの人目の周りが黒いよー。悪い人なのー?」
「ねーねーおとうさーん。ハニー、おっぱい見えちゃうよー。大丈夫なのー?」
ドリフ系ギャグが飛び出したり、レトロなお化粧のOLさんが出てきたり
ハニーがピンチになって変身したりするたびに
彼女は必死になって、お父さんに訴えかけるんですよ。
それも、隣に座るわたしに迷惑にならないようにと気遣うらしく、全て小声で。
――人って不思議なもので
そういう態度を取られると、逆に気になっちゃうものなんですよねぇ。
「きっとお父さんは、今すっごく困っているんだろうなぁ」
おまけに。
「もう。なんだかよくわかんなかったよ……」
映画を見終え、小さな声でぽつりとつぶやいてから、彼女は、
最終的には娘そっちのけで映画を楽しんでいたお父さんを振り仰ぎました。
……そして、トドメの一言。
「おとうさんもさぁ。もう34歳のオジサンなんだからさー。
こーいうの見て喜んでちゃ、ダメなんじゃないのー?」
――わたしがこみ上げる笑いを何とか呑み込みつつ、ダッシュでロビーに向かったのは言うまでもありません。
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まあそんな具合で
1990年代生まれのお嬢さんには不評のようでしたがアニメーションと特撮がいいバランスで組み合わさった演出は、新しいようなレトロなような、不思議で面白い雰囲気だったし
徹底的にB級の線にこだわったスタイルのおかげで、終始、難しいことを考えずに楽しめたし……で、この「キューティーハニー」、B級好きのわたしとしては
「予想以上によかったな」という感想でした。
上演時間も比較的短いので、時間がぽっかり空いたときにでも見に行かれてはいかがでしょうか?
――席の近くに親子連れがいたら、映画の面白さも、きっと倍増です。
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