チカラノカギリ

#02_1 テキジョウシサツ


 ピンポーン、とインターホンが鳴った。ので見てみると、インターホンのモニタの中で、ポニーテイルの知らない少女がこちらを睨みつけているところだった。
 こんな小さな画面の、画素数の荒い映像でもはっきりとわかる——彼女は、煮えたぎらんばかりの敵意に満ちている。無視するのが正解だろうけれど、『この子何しに来たんだろう?』という疑問と『なんか面白そう』という好奇心に勝てず、『ふぉーぱーそん』社長こと神尾武史かみおたけしは「はーい」と軽い調子で扉を開けた。……もちろん、手元のスマホで動画を撮影するのは忘れていない。
「こちらに、ダンとかいう人いますよね? 出してください」
 開口一番、目の前の少女が噛みつきそうな勢いで口を開く。えんじ色のリボンに水色のブラウス、白いベストと膝丈明るめ紺色のプリーツスカート——つまり比較的近所にあるスポーツ強豪校の制服を身につけた、中背だが均整の取れた体つきの少女だ。夕方から夜に差し掛かるこの時間、この高校の在籍者ならほぼ全員が運動系部活動の真っ最中だろうに、こんなところに彼女は何の用なのだろう?
「……それとも、あなたがダンですか? あなたがダンなら、理由を聞かせてください!」
「ええと……ちょっと話が見えないんだけど、あなたはどちらさま? ここが何処だかわかって来てる?」
 さすがにちょっと、話の展開が早すぎる。ウチのぶっ飛んだ視聴者でも付いてこられないレベルだろう。状況説明を促してみると、目の前のJK(多分)の後ろからもう一人、別のJKがひょっこり顔を覗かせた。さっきからギャンギャン吠えている少女より背は少し低め。ショートヘア。彼女とは別の、深緑系ストライプのネクタイと紺色ベストに入った襟元の白線が印象的な、白ブラウスに濃紺膝下スカートの制服。……こちらは多分、この辺ではまあまあ有名な中高一貫進学校のものだったはずだ。
「こちら、『ふぉーぱーそん』のオフィスですよね? 私、スマイルちゃんの件でDMしました、杉下と申します。……あ、もちろん名前は、ピー入れてくださいね」
 よく見ると杉下と名乗ったJKの手にもスマホが握られていて、外付けカメラがこちらを向いている。同業者の線も捨てきれないが、今の言葉が本当であれば、彼女たちがここにやってきた理由は単純明快——神尾自身が呼んだから、だ。
 もちろん「呼んだ」と言ったって、ウーバーを頼むみたいに「30分くらいで来て」という話はしていない。ビジネスの話をするトーンで所在地と連絡先を提示し、「ご都合のよろしい日時を教えてください」とごく穏やかかつ丁寧な文面を送っただけだ。それがDMだからといってノータイムでのリアクションは求めていない。この申し出に対し、JK特有の軽やかさで彼女たちが文字通り飛んできたのは、JKたちの感覚とこちらのそれが大きく乖離しているという何よりの証拠……なのだろう。
「ああ、はい。杉下さんね。素早い対応過ぎて驚いています。『ふぉーぱーそん』代表取締役、社長ことロダンこと、神尾武史です」
 『ロダン』はVチューバーとしてのアバターネーム。しかしあっという間に誰もその名で呼ばなくなり、代わりに『社長』という役職名がそのまま呼び名にスライドした。神尾武史は戸籍上の名前だ。「……そっちこそ、ちゃんと名前にピー入れてくれるんだろうな?」という文句だけは営業スマイルを浮かべながらかろうじて呑み込んだものの、当てこすりがイヤミに聞こえるとげとげしさをまとって、口から飛び出してしまう。
「いつもご視聴頂き、ありがとう。連絡もお待ちしていました。お会いできるのはもっと後になる予定だったので、ごめんね、ダンは今日呼んでいないんだけど、それでも大丈夫かな? ……杉下さんじゃない方の彼女は、少し落ち着こ?」
 突然の訪問だし自宅も兼ねてはいるが、ここは一応登記に載せているれっきとした会社だ。神尾ことロダンこと社長は玄関扉を大きく押し開き、人が通れるように身体をドア側に寄せた。
「ま、立ち話も何だし、中にどうぞ。……大丈夫。オレも立場ある人間だし、双方動画撮ってるし、変なことはしませんよ」

*

 話は、ほんの1時間ほど前まで遡る。

 あの悪夢のような『燃料投下』の朝の後、彩花は手際よくDMを送り『ふぉーぱーそん』と連絡を取ってくれたという。そもそも芽衣はインスタのアカウントを持っていないので、向こうのリクエストを聞いて即座に連絡を取るのは不可能だ。
「『ふぉーぱーそん』の社長がメイちゃんに会いたいって。私が立ち会うっていう条件まではOKさせたけど、メイちゃんとしてはどんな感じ? 会いたい?」
 放課後待ち合わせたスタバでざっくりと話を聞きながらDMのやりとりを見せてもらった……までは良かったが、その内容に少し引っかかるものを感じて、芽衣は少し考える。
「何でこの人たちは私に会いたいの? あのダンとかいう人は完全にこっちを馬鹿にしてたし、そもそも勝手に動画を使ったこととか、謝ってる気配もないんだけど?」
「そうだねえ。一応『インスタの動画を勝手に流用されたことを遺憾に感じている』と水は向けたんだけどね。その辺に関してはガン無視だね」
 横から自身のスマホをのぞき込み、彩花も小さく首をかしげた。
「メイちゃんが本気で怒ってるってわかれば、少しは態度も変わるかもしれないけど……基本的には『絡んでくれて嬉しい』みたいなファンの子を相手にしてるんだろうから、こっちが本気で文句言ってくるみたいなのに慣れてないのかも」
「何ソレ!? むかつくわー」
 昨日からの怒濤の展開に混乱はしているものの、ダンというVチューバーや彼の所業に対する怒りが霧散したわけではない。見せろと言われればいくらだって、その感情はたやすく取り戻せる。
「アヤカは今日塾? このあと忙しい?」
「いや、今日は塾ない日。部活もサボったし、大丈夫だけど……」
「じゃあ、今から乗り込もう! 絶対謝らせる!」
「マジか。……相変わらず勢い重視だね、メイちゃんは」
 DMには『ふぉーぱーそん』株式会社の住所も記載されていた(やはりというか何というか、例の公園の近くのようだ)。所在地はここから遠くないし、マップで調べれば正確な場所もわかる。イメージ的に、こういった業種の会社は朝より夕方の方が稼働しているような気もする。それより何より、こういったものは先手必勝だ(と思う)。向こうに準備され、丸め込まれてしまう前にこちらから飛び込んでいくのも悪くないだろう。

 ……という流れで、半ば勢いのまま、芽衣は彩花を引き連れここまでやってきた。のだが。

「なるほど。ダンの添削動画でキミの動画が使われた結果、トラブルが起きてるんだね。それは申し訳なかった」
 興奮冷めやらぬ芽衣……ではなく、理路整然とした彩花の説明を受け、あまりにもあっさりと『ふぉーぱーそん』の社長こと神尾武史は謝罪の言葉を口にして、芽衣に頭を下げる。
 通された部屋は、何というか、何もない部屋だった。二人に椅子を勧めてから、神尾は隅の方にさりげなく置かれていたカメラのようなもののスイッチを入れ、角度を調整する。横目でそれを見た彩花が低い声で芽衣に「多分ここ、撮影用の部屋。あれが動画用のカメラだと思う」と教えてくれた。
「でも、おかしいね。アレは確か……去年の12月か、今年の1月くらいの動画だったはずなんだけどな」
「はい。そのはずです。なのでそれを証明して欲しいんです。お願いします!」
 神尾の言葉に、思わず芽衣は身を乗り出す。あまりにも簡単に得られた謝罪と、思いがけず望んでいる方向に動き出した会話に、既に装備してきたはずの怒りの感情すら吹き飛びかけていた。横から、彩花が足りない情報を補足する。
「彼女、あの動画が入学以降に撮られたものだと誤解された結果、今、学校でちょっともめているんです。彼女の学校に、入学以降の動画公開に厳しい制約があるので……。ですから、第三者の方からあれが入学前のものであると証明して欲しいんです」
「なるほど」
 相づちを打ちながらも、神尾は心ここにあらずといった表情だ。何か別のことを考えているような感触。
「でもね。一つ確認したいんだけど、スマイルちゃんの学校で問題になるのは、動画の撮影時期じゃなくて公開時期なんでしょ? それだったら、公開時期は今から10日くらい前ってことにならない?」
「それは……どうなの、アヤカ?」
「どっちかというと内容が問題になってるワケだから、大元の動画撮影時期がもっと過去の、高校入学前だとわかれば大丈夫だと思うよ」
 この社長とかいうヒト、困っているとか心配しているとかいうより、何かを試しているような表情だ……と、彩花の冷静な受け答えを聞きながら芽衣は思う。「考えていたより話のわかる人だ」という神尾への評価は、早計だったかもしれない。
「タイムスタンプの提出はできるけど、そもそもアレ、公開の了解を得てもらってきた画像なんだよね」
 件の『何か別のことを考えている』表情のまま、神尾が更に言葉を重ねる。
 彼の話によると、ダンス添削企画に使う動画は、ダンこと弟の神尾聡史かみおさとしが古くから懇意にしているダンス教室で先生が撮影したものや、先生の知り合いが同じように撮影したものを借りてきているとのこと。公開OK、あるいは既にネットで公開されているものから選んでいるので、もちろん今まで、肖像権等のもめ事に発展したことは皆無なのだそうだ。——言われてみれば確かに、彼らが公開しているのは個人的な趣味の動画ではないのだから、その辺はきちんと問題が起きないようにする必要があるのだろう。
「えっ……まさか、ママがOKしたってこと? それって最近ですか?」
 不安が、思わず口をついて出る。
 説明を聞けば聞くほど『ふぉーぱーそん』の方はきちんと手順を踏んでいて、非は芽衣の方にあるような気がしてきた。……マズイ。マズすぎる。
「ダンがデータを確認して、コメント入れる動画を撮って、それを編集してアップするから……昨日とか先週とかのレベルの最近ではないよ。データを入手したのは、1ヶ月くらい前かな?」
「そうなると、どっちにしろ彼女の入学後の話になりますね。うーん……」
 焦る芽衣とは対照的に、あくまでもゆったりしたペースで彩花が口を開き、遠くを見つめる目になる。少し考えた後、焦点を取り戻した彩花の目が、顔ごと社長の方を向いた。
「あの。それで、どうしたら動画の撮影時期を証明してもらえますか? 先方に連絡が取れないとかで、もし証明が難しいということであれば、BGM付きでもう一度流してもらうという形でもいいんですけど」
「BGMは……ごめんね。版権の問題があって」
「うーん、そう来ますか。まあ、そちらが証明に乗り気じゃないのはわかりますけど……」
 含みを持たせた彩花の言葉に、初めて社長こと神尾の目が泳いだ……気がする。芽衣が見逃さなかったのだから、彩花がそれを見逃すはずもない。間髪入れずに言葉を継ぎ足す。
「こちらからの用件はそれだけです。そちらからのご用件は何ですか? 一応お断りしますけど、また生配信で『緊急発表』とかは勘弁してください。私も彼女も、夜は自由にネットが見れる環境ではないので」
「あ、そうなんだ。……そうだよね。高校生だもんね」
「重ねて言っておくと、そういう個人情報も晒さないようにお願いします」
 ぴしゃりと社長に念を押して、彩花はいきなり立ち上がった。芽衣の方を振り返る。
「今日はもう帰ろ。……あ、そちらのご用件ですが、今伺えないようでしたら、DMでご連絡頂く形でOKですので」
 はじめの言葉は芽衣に、そして続いての言葉は神尾に顔を向けて発してから、彩花はぺこりと頭を下げ、芽衣を引っ張って部屋を後にした。
 おそらく残された社長こと神尾も呆気にとられているだろうが、それは芽衣も同じこと。もうちょっと、何か解決に向けて話し合いができると思っていたのだけれど……。

*

「……いやいや。あのヒト、メイちゃんのために何かする気一切なさそうだったじゃん。あれ以上あそこで話してても、時間の無駄だったよ」
 しかし。
 こちらの思いとは真逆の感想を持っていたらしい彩花にたしなめられ、芽衣は自分の、人を見る目のなさに少々落ち込んでしまった。
「えーと。つまり、アヤカがいなかったら、今日も私はヤバかったってこと?」
「言いづらいけど、多分ね」
 スタバは先ほど行ってしまった(しかも昨日も行っている)ので、これ以上は予算オーバー。帰りの電車を待ちながら(という体で)駅のホームにあるベンチで話をすることに決め、芽衣と彩花は自販機でペットボトルを買い、二人並びで座る。フタを回しながら「だいたいさー」と彩花が口を開いた。
「向こうが動画撮ってるんだから、あんまり名前呼ばないで欲しかったな。私が名字名乗ってるトコはともかく、メイちゃんが名前呼んでるのまで音消すとは限んないじゃん?」
「そっか。そうだよね。ゴメン」
 言われてみれば社長との会話で、彩花は芽衣の名前を一切出していなかった気がする。芽衣の方は、そこまで気が回らなかった。その辺も、今のネット社会では常識なのだろうか? なかなか大変だ。
 一応口では文句を言ったものの、彩花はそこまで気にしていない様子で「ま、今度から気をつけて」と流しつつ、ペットボトルを口に運ぶ。
「それから、動画の件。1ヶ月前に入手したデータなら、出所はメイちゃんママのインスタ経由じゃないと思うよ。メイちゃんママ、中学卒業くらいのタイミングでアカウントごとインスタ消してたじゃん」
「あ、そっか。……え、そしたらどこの誰が動画を?」
 冷静な指摘にああ、と膝を打った後、すぐに浮かんできた次の疑問を口にすると、答えを用意していたとしか思えない素早さで、彩花は芽衣に答える。
「メイちゃんママじゃなければ、私的には、あと一人しか思いつかない。……サナ先生だと思う」
「サナ先生……確かに、そのセンはあるかも」
 サナ先生——正式名称中野沙苗なかのさなえ先生は、芽衣や彩花が師事していたチアスクールのコーチであり代表者。現在も、幼稚園児から中学生を対象としたチアスクールのコーチとして、日々芽衣たちの後輩に当たる少女たちを指導しているはずだ。確かにサナ先生なら指導用に自身が踊っているダンスの動画を撮って皆に公開していたし、芽衣の母が撮影し「全世界に公開」していた芽衣のレッスン動画を保存し、他のメンバーに見せたりすることもあっただろう。加えて言えばサナ先生は、チアスクール生たちのイベント出演交渉なども自身で手がけているため、大変顔が広い。『ふぉーぱーそん』社長こと神尾がどこかで彼女と繋がった可能性も捨てきれないし、彼が「公開OK、あるいは既にネットで公開されているもの」だと言い切る以上、サナ先生の手元にあったデータがこのタイミングで流出した可能性だってある。……というか、多分、発信源はココだ。
「ま、サナ先生には後で聞いておくとしてさ」
 ペットボトルを脇に置き、面倒くさそうに彩花がポケットからスマホを取り出して画面を確認し、芽衣の方に向けた。
「こっちはどうしよう? 早速、社長がDM送ってきてるけど」
「そうなの? 何だって?」
 彩花に差し出された画面には今日の訪問の礼などに続き、一行開けて『さて、今回の件についてですが、この件を弟に謝罪させるため、策を講じたいと考えています。』から始まるセンテンス。その方法として、ダンが納得できるよう周囲から説得してもらう形にしたい……というようなことが回りくどく、懇切丁寧に滔々と長文で語られている。
「んー……謝りたいなら、謝ってもらえばいいんじゃない? 完全勝利ってことでしょ?」
「違うよー。よく読んで、メイちゃん」
 画面に全て収まりきらない長文に、途中で目が滑って適当に流し読みした状態で返事をしたことをズバリ指摘され、ぐっと言葉を詰まらせる芽衣の肩を、彩花が小さく笑って肩で押した。
「簡単に言うと、あっちの視聴者に判定させたいって話。メイちゃんの動画を新しく撮るかこっちから出すかして、その同じ振りでダンにも踊らせるって。その2本の動画のイイネの数で勝負するみたいなことを言ってる」
「……は? 何その寝言。向こう謝る気皆無じゃん」
「デスヨネー。まだ出たてとはいえダンス系Vチューバーと、フツーのJKチアダンサーじゃ、そもそもフォロワー数の桁が違うしねー」
 芽衣にも瞬時にわかるレベルで、それは勝負にすらならない茶番だ。『ふぉーぱーそん』のファンは、勝負だと言われればノータイムでダンの方に一票投じるだろう。そもそも彼らが、芽衣の方の動画を見るかすら怪しい。どこにアップしたとしても、芽衣の方のファンなどいないも同然で、結果は火を見るより明らか……としか言いようがない。——ホント、シロートがうかつに手を出してはいけない世界なのだ、ネットってヤツは。
「そうだよね。うっかり向こうの引っかけに乗っちゃうトコだった。危ない危ない」
 胸をなで下ろしながら、ペットボトルのお茶を一口。そんな芽衣の横顔を、隣に座る彩花がまっすぐに見つめてきた。
「でもさ。一応聞きたいんだけど、メイちゃんの目的は何? ダンに公開謝罪させること? それとも部活に戻ること?」
 自分もペットボトルのお茶を一口飲んで間を取り、彩花は何か考えている時特有の、遠くを見つめる目になる。
「もし、謝らせることはどうでもよくて単に部活に戻りたいってだけなら、この社長の申し入れは使えるかもしれない……」
「マ?」
「マ」
 多分、今できる中で一番短い会話。言葉と同時に信頼もやりとりして、芽衣と彩花はうなずき合った。
「じゃあ、アヤカに任せる」
「おっけー。期末テストまでには何とかする。……任せて」
 にやりと不敵に笑って、彩花は高速で返信のDMを打ち始めた。向こうからも瞬時に返信があったらしく、時間にして5分足らず。数回のやりとりで話は終結する。
「とりま、社長には返信しといた。検討して、なる早で告知かけるって。……さすが素早いな。こっちに気が変わる隙を与えないって言うか」
 やりとりを芽衣に見せてから、彩花は別のアプリを起動させた。芽衣の方にも登録されているサナ先生とのトーク画面を開いて、またもや高速で何かメッセージを打ち込む。
「あー……こっちは今日、小学生のレッスン日だっけ? 既読にもならないや。動画横流しの犯人確定は明日かなー」
 数十秒待っても表示の変わらない画面に見切りをつけ、彩花はスマホケースのフタをぱたんと閉めた。ほぼ同時に、まもなく芽衣たちの自宅方面の電車がホームにやってくるというアナウンス。
「とりあえず今日はこんなとこかな。緊急告知配信については早めの時間にやってくれるって言うから、できれば当日。時間遅くてダメなら翌日の朝早く、お互い、配信見よう」
 わかった、と答えた芽衣の言葉はホームに滑り込んできた電車の音でかき消されたかもしれないが、きっと問題はないだろう。

 電車が去った後、先ほどまでホームのベンチにいた違う制服の女子高生二人組は、他の乗客と共に電車に吸い込まれ、姿を消していた。
メッセージを送る!