第4話 未知の敵 Unknown Enemy

フィリア
ふえっ? ひとり?
ってか、こっち来てる?
あわわわわ。
なら、君がもたもたしている間に、ナイフを手にした盗賊が切りかかって来るよ!

フィリア
うひゃっ!
と、とにかく避けますっ!!
あー、これは1年間騎士の訓練を受けたフィリアであれば、余裕で攻撃を躱すことが出来るね。フィリアに攻撃を躱された盗賊は「ん?」という顔になって、不思議そうな表情で自分が手にしたナイフを見ている。

ハリー
その間に、僕は剣を抜いて先輩の援護に向かいます。
アレン
ハリー!
お前はおまえの相手に専念しろ!!


ハリー
えっ?
・・・しかし・・・
ブレンダ
過保護になるんじゃないよ?
フィリアを信じてやんな!


フィリア
うん。大丈夫!
私だって暁の騎士団の一員だもん。
こんなのに負けたりしないから!
盗賊G
こんなのとは何だコラァ!


フィリア
もう一度、『避術』で躱しますっ!
派手に空振りした盗賊は、足がもつれる感じでよろめいている。

フィリア
・・・ちょっと、足ひっかけてみたりして?

フィリア
おーっ。
私ってば、ホントに強い?

ハリー
先輩!
余裕を見せてないで、さっさと倒してください!!

ハリー
・・・応戦します!

ハリー
・・・ならば、これで一気に・・・っ!
アレン
ハリー!
殺すんじゃないぞ!!


ハリー
・・・了解しました。
では、刃ではなく、剣の腹で盗賊を打ち据えます。

ハリー
むしろ全力で。
悪党に手加減する気はありませんから。
アレン
ちょ! おま・・・

ブレンダ
あっちゃあ〜。


ハリー
・・・・・・?

ハリー
・・・あっ!!

フィリア
わわわっ! ハリーくんピンチじゃん!!
今、助けに・・・

フィリア
も、もう一度、避けてみます!

フィリア
あうっ! ・・・や、やられちゃった!?

ハリー
先輩ッ!!

ハリー
糞ッ!!
僕は、もう一人の盗賊を格闘でねじ伏せてから、先輩を救出に向かいます!
ブレンダ
ちょっ!
ハリー、落ち着きなって!!


ハリー
いくら正騎士の御言葉とはいえ、聞けません!
盗賊に全力で拳を打ち込みます!!

フィリア
えっと・・・あの、私はどうなっちゃうんでしょうか?

フィリア
ふえぇぇっ! さ、刺されちゃいましたぁ!!
・・・・・・きゅう。

ハリー
フィリア先輩に組み付いている盗賊を蹴り上げます!!

ハリー
さらに攻撃して、確実に仕留めます!
ハリーの追い打ちで、盗賊は数メートル吹っ飛ばされる。すでに意識を失っているみたいで、そのまま投げ捨てれらたゴミ袋みたいに、地面にぶっ倒れてしまう。

ハリー
当然、受け止めますよ!
受け止めてから、先輩の傷を確認します!

ハリー
すぐに解る、って・・・まさか!?

ハリー
・・・え?

ハリー
つまり先輩は、刺されたと思って驚いて気を失った、と・・・?

ハリー
・・・よ、良かった・・・。
ブレンダ
だから、落ち着けって言ったのに・・・。

アレン
いつも冷静なハリーが、そこまで取り乱すとはな。
やっぱり、お前ほどの奴でも初陣は怖いか?

ブレンダ
・・・それだけじゃないと思うけど・・・ま、その話は置いとくさ。


ハリー
面目次第もありません・・・って、師匠とブレンダさんの相手は?
ブレンダ
・・・ああ、これ?


ハリー
し、師匠は?
アレン
おう。こっちも、じきに終わるぜ。

アレン
ま、正騎士ともなれば、俺もブレンダもこの程度の奴らなら素手で楽勝ってとこだわな。ハッハッハッ!


ハリー
・・・むしろ師匠の場合は、素手の方が凶悪ですから。
アレン
それで・・・頭領さんよ。
どうする? まだやるかい?

盗賊の頭領
何なんだよお前ら・・・こっちは、倍の頭数が居たんだぞ?
それを事も無げによぉ・・・。

アレン
言ったろ?
俺らは『暁の騎士団』だって?

盗賊の頭領
『暁の騎士団』何て、聞いたこともねぇや。
ハッタリかましてやがんのかと思ったぜ・・・。

アレン
何だぁ? 知らねえってか!?
『暁の騎士団』をマイナー扱いしてんじゃねーぞコラァ!!

盗賊の頭領
うひいっ!!

ブレンダ
ま、実際、正式な騎士団になったのって数年前だしね。
それ以前は、自警団みたいなもんだったし。

ブレンダ
そもそも、本来はノーファス海峡を守るのが務めだし、内陸で活動する機会は少ないからさ。

アレン
何でわざわざ、知名度が低いってことを納得させるような説明してっかなオメーは?


ハリー
・・・どうやら、決着はついたようですね。
フィリア先輩の様子はどうですか?

フィリア
うーん、むにゃむにゃ。
・・・って、あれ? ハリーくん?

ハリー
・・・うわっ!?

フィリア
え? なになに?
何がどうしたの?

ハリー
いえ、すみません。
先輩の顔があまりに近かったもので。

フィリア
ってか、私、確かお腹を刺されて・・・
あれ? 全然痛くない?
ブレンダ
騎士団支給の鎧が、片手で突いたナイフくらいで抜ける訳ないだろ?

ブレンダ
・・・ったく。
気を抜いてっから、そんなコトになんだよ。
基地に戻ったら、鍛えなおさないとダメだね。


フィリア
ひえぇぇぇっ!
そ、それはご勘弁を〜。
アレン
なに和んでんだよ?
こいつらをひっ捕まえて、連行すっぞ?


ハリー
この数を、ですか?
アレン
力の差は、分かっただろうさ。
もう無駄な抵抗はしないよな?

盗賊の頭領
ち、ちくしょう!
覚えてやがれっ!!

アレン
ありゃ。逃げやがった。
なるほど、抵抗は諦めて逃げるってテもあったか。

アレン
ハリー! 追うぞ!!


ハリー
もう戦意は失っているようですし、部下も全員捕らえました。
追う必要は無いのでは?
アレン
馬鹿言ってんじゃねぇ!
ここで逃がしたら、アイツはまたよそで同じ事をやるぞ!!

アレン
甘い考えで逃がした悪党が、どっかで誰かの命を奪っちまったらどうする!!


ハリー
・・・すみません。
浅慮な発言でした。

ハリー
全力で追います!

フィリア
わ、私も追います!
ブレンダ
あんたは、アタシと一緒にそこに転がってる盗賊どもを全員縛り上げんだよ。


フィリア
あれ?
ブレンダさんは行かないんですか?
ブレンダ
あんた一人残して行けないだろ?
それに、追撃は走るのが得意な奴に任せときゃいいのさ。

アレンは『走法』[4]、ハリーは[5]、ブレンダは[1]だからね。ちなみにフィリアは・・・。

フィリア
えへへへ。
『走法』持ってませーん。
ブレンダ
何、笑ってんだい。ほら、ロープ。
さっさと転がってる奴らを縛っちまうよ!


ハリー
変ですね。

ハリー
逃げる気なら、もっとちょこまかと方向を変えるとか、森の中に逃げ込むとかの方が、追跡者を振り切りやすいのでは?
アレン
つまり、湖に逃走手段を用意してるってこったな。
まぁ、船か何かなんだろうけどよ。


ハリー
船はまずいですね。
陸から馬で追っても、追いつけないでしょう。
アレン
おうよ。
だから、船に乗る前に捕まえる!


ハリー
了解です!
アレン
ダテに頭領やってねーな。
なかなか速ぇじゃんよ!


ハリー
あれに乗り込まれたらアウトですよ!
アレン
だから、その前に捕まえるって言ってんだろ!!

アレン
やべえやべえやべえ!
ハリー! お前、泳げっか?


ハリー
まぁ、師匠と同じくらいには・・・。

ハリー
・・・そういう問題じゃないでしょう。
のこのこ泳いで追って行ったら、船の上から剣で突かれて終わりですよ。
アレン
そりゃそうだ。

アレン
ンなろぉ!
ハリー、どっかに拳くらいの手ごろな石とかねーか?
あのハゲ頭にブチ当ててやる!


ハリー
師匠のパワーでそんな事したら、頭領の頭なんて吹き飛んでしまいますよ?
アレン
知るかそんな事!


ハリー
そこは、知ってください。
さっきは『殺すな』って言ってたじゃないですか。
アレン
・・・と、とにかく、一旦野営地に戻って、馬で追うぞ!


ハリー
・・・了解です。

ハリー
・・・は?
アレン
・・・なん・・・だ、ありゃあ!

???
コォォオオォオオォォッッッ!!


ハリー
これは・・・マズくないですか?
アレン
ああ・・・ヤベぇな・・・。

![光と闇のレジェンドiF -皚々たる冀望-[第1章]](images/title_mk002n.png)