今日も今日とて路地裏で、暇に飽かしてグダグダしていたシエスとびーすと。
なにか面白いことはないものかと、あくびまじりで尋ねます。
「おいびーすとぉ。てめーにとってのおもしれえってな、一体なんだ?」
「黄金リングのかけらを集めることだぜ、将軍」
「黄金リング? なんだそりゃ?」
「よくわかんねえけど、イモかなんかじゃねえか?」
「イモ?」
「メロンみたいな味がする」
「メロンだと?」
「バナナみたいな味もする」
「バナナぁ?」
「なぁんてこの紙に書いてあったぜ?」
ビーストはどこからともなく紙切れを取り出すと、それをシエスに渡しました。
「なになに? 都始まって以来の大騒動? つつましき善は無力ゆえ、悪には悪を以って征せよ。眼には眼を歯には歯を!」
イモはおろかメロンのこともバナナのことも書いてはありません。けれどもシエスはわなわなと手を震わせ、嬉しそうに笑いました。
「いいこと言うじゃねえか。こりゃまさにオレのための事件だぜ! よぉしさっそくいくぞびーすとぉ! オレはもう一人のオレに会いに行く!」
理屈はよくわかりませんが楽しければいいのです。ビーストはこくりと頷くと、うひゃっほー!と雄叫びをあげてついていくのでいた。
自分が誰だかわからない。だからすべきこともわからない。どうしてわからないのかさっぱりわからない。 |